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どこかのだれかのただなんとなく

NANABLO

   

りんごの耳

私の一番末っ子の猫は4年ほど前に妹に連れられて家にやってきた。
キジトラや豹柄猫に目がない私なので、トラといえば私のものみたいなイメージらしい。
当時私には一番年長の相棒がいて、さらに4匹の子分計5匹を従えていたし
妹も2匹の猫をすでに飼っていたためさらに猫を増やすなど考えてもいなかった。
ところが妹がどこからか猫をもらってくるという話をしはじめた。

白石のほうにあるちょっとスゴい雰囲気の動物病院がらみの話らしい。
母猫に育児放棄されたと思しき生まれたばかりの猫を
近所のオバちゃんが4匹拾ってきて朝な夕なミルクをあげて世話をしたが、
その甲斐なく2匹は他界してまった。
残った2匹の里親探しをスゴイ動物病院が手伝ったというらしい。
居候はもともとトラ猫好きだったものだから、
迷わず引き取りますと言ったそうだ。
当時はまだ完全にうちに居候してはいなかったから、
自分の部屋で飼おうとでも思ったのだろう。
約束を取り付け、猫が自力で食べたり遊んだりできるようになるまでは
オバちゃんが面倒をみるということで話はついた。
しかしその1週間ばかりのち、
妹の友達が札幌ファクトリーに1500円で覆面ブチの子猫が売られているよ
という話をもちかけてきたらしい。
もともと牛の柄にご執心の妹であったから飛びつかないはずもなく
急いで現場へかけつけたところ、1500円というのは間違いで実は8000円もした。
だがあまりのかわいさに8000円も払って買った猫に妹も居候もベタボレであった。
どこへいくにもおくるみに巻いてつれて行き、まるで人間の子供を扱うかのようであった。
私はキジトラの話はどこへいったのだろうなと思いつつも
覆面買ったのだからあの話は立ち消えにでもなったのだろう、そう思っていた。
 

とうとうりんごはとある午後、茶色の毛布に包まれて突然やってきた。
くしゃっとした顔立ちの、やけにちっこい猫だった。070526_173807.jpg
妹は毛布にくるまれた子猫を私のベッドにポトっと置くと
ハイと言って部屋を出て行った。
ハイといわれてもナァ・・・
もともとあの二人がほしくてもらってきたものだから
私が自分のものにしてよいのかどうか・・・
そんなことを考えながらいたものだから、
一応名前をつけてみたものの自分の猫という認識を持たずに、
家の猫というスタンスで接することにした。
だがりんごのほうはそうでもなかったようで妹によれば
居間に遊びにきていても、時間になるとトコトコ小さい体で姉さんの
部屋に帰っていく姿を何度もみている、自分は姉さんの猫だと最初から思っていたよ、妹はそう言った。


この認識の食い違いは1年ほども続いていた。


ある冬の終わりに、りんごは玄関の隙間から外へ出てしまった。
妹が呼んだがじらすばかりで中々もどってこないので、
買い物の荷物の片づけがすんだら家に入れようと思いそのまま忘れてしまったという。
しばらくしてりんごがいないことに気づいた妹はあわてて探しはじめたが
中々みつからない、冬だし、雪はふっていなかったから足跡があると思ったけれど
なかなかそれも見つからない、近くにはいるのだろうと思ったけれど
呼んでもりんごは鳴き声はめったにださないのだ。

私があきらめ半分に1階降りた部屋の前に散らかっているガラクタを調べると
ビニールシートのすきまでじっと動かないりんごを見つけた。
こわばった顔をして、微動だにしない。
私が抱き上げるとしっかりと背中をつかんで、ようやく家に帰ってきた。
たぶんそれからは何かしらお互いに心通じるものを得て、
りんごは私を、私はりんごを特別な存在として捉えるようになったと思う。

りんごは漫画『こち亀』に時々出てくる法条正義(凄苦残念に改名した)によく似ている。
なにかと面白い顔をしている。
表情はあまり豊かではなく、動きももっさりしていて、なんとなくおかしい。
けれどそこが可愛らしくてたまらない。
よく寝ているときに寝ぼけて悲しげに鳴いている。
どんな夢をみているのかとても気になる。

りんごは初めて発情期に入ったころに子宮を摘出する手術を受けた。
なんとなく元気もなく様子がおかしいと思ったら、
尻のあたりから膿のようなものがたくさんでていた。
丈夫そうに見えても、生まれてすぐ母親に捨てられた子だし体が弱いだろうなとは思っていた。
手術から帰ってくると、りんごはますます私にべったりになった。
オシキャットのサーシャとともに私が便所へいくときは必ずついてくる。
私が外へ出かけるとかならず玄関で待っている。
私のすぐ横は自分の寝場所だと思っている。

おととしの暮れあたりからりんごがやたらと耳のあたりをかきむしるようになり
顔が半分なくなってしまうのではないかというぐらい毛がぬけてしまった。
薬を塗ってもよくならないので、エリザベスカラーをつけてもらった。
飲み薬と塗り薬で治療を続けて3ヶ月以上かかって完治した。
カラーをつけるとほかの猫たちが興味をもってよってくる。
だが特にいじめられることもなく、彼女は堂々とカラーをして上手に家中を闊歩した。
ごはんを食べるときはカラーをすっぽり食器にかぶせるようにして食べる。
水をのむときはカラーのへりでも水をすくってしまい、濡れてしまうこともある。
トイレに入るとカラーがブルドーザーのように砂をすくいあげてしまうこともある。
色々不便だったろうが、彼女はなんでもうまくやりこなしていた。
一番こまったのは、ちょっとキレの悪い糞をしてしまったとき
自分で処理することができないから、
床に肛門をすりつけてずりずりと座ったまま移動したことか。
本人も飼い主もトホホ。

100312_154658.jpg

せっかくよくなったと思ったけれど
ふたたびりんごは外耳炎にかかってしまったみたいだ。
先日からバリバリと後ろ足で顔を掻いている。
仕方がないからまたカラーをつけた。
しばらくはこのまま様子見。

だけどカラーがとってもよく似合っているよ。

 
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